

REPORT
〈コラム〉
観光分野では、「観光マーケティング」という言葉が広く使われるようになりました。
一方で現場では、
観光マーケティング=SNS運用
観光マーケティング=広告出稿
観光マーケティング=データ分析
といったように、意味が曖昧なまま使われているケースも少なくありません。
本記事では、観光デザイン研究所の視点から、
観光マーケティングとは何を指し、何を担うべきものなのかを整理します。
観光マーケティングとは、単に「人を集めるための手法」ではありません。
本来のマーケティングは、
誰に、どのような価値を、どのように届け、
それがどのように地域に循環していくのかを設計すること
を意味します。
観光に置き換えると、それは
どの市場・どの旅行者をターゲットとするのか
その地域ならではの価値は何か
どの接点で、どのように体験してもらうのか
を構造的に考える行為です。
観光マーケティングと混同されやすい言葉に「観光プロモーション」があります。
両者の違いを整理すると、次のようになります。
観光マーケティング
→ 戦略・設計の領域(全体設計)
観光プロモーション
→ 伝達・実行の領域(手段)
プロモーションはマーケティングの一部であり、
マーケティング全体を代替するものではありません。
プロモーションだけを強化しても、
誰に向けた発信なのかが曖昧
地域側の受け皿が整っていない
成果の測定軸がない
といった状態では、期待する効果は得られません。
多くの地域で見られる課題は、
「打ち手」はあるが、「設計」がないという点にあります。
例えば、
SNS投稿は継続しているが、目的が共有されていない
イベントは実施しているが、次につながらない
広告は出しているが、効果検証がされていない
これらはすべて、
マーケティングの視点が欠けたままプロモーションを行っている状態です。
観光マーケティングは、
こうした施策を 点ではなく線・面として捉え直す役割を担います。
観光マーケティングでは、最低限次の4つを整理する必要があります。
どの市場・どの層を狙うのか
「すべての人」を対象にしていないか
その地域ならではの価値は何か
他地域と比べて選ばれる理由は何か
どのチャネルで情報に触れてもらうのか
来訪から体験、消費までの流れは設計されているか
単発で終わらず、次につながる仕組みがあるか
効果を検証し、改善できる体制があるか
これらを整理せずに行う施策は、
短期的な成果が出ても、長続きしない傾向があります。
観光マーケティングで重要なのは、
短期成果と中長期の取り組みを切り分けて設計することです。
短期:
認知向上、来訪促進、イベント集客
中長期:
ブランド形成、人材育成、事業基盤づくり
これらを混同すると、
「成果が出ていない」「意味があったのか分からない」
という評価になりがちです。
観光マーケティングは、
成果が出るまでの時間軸を含めて設計する行為だと言えます。
観光デザイン研究所では、観光マーケティングを
観光デザインの一部として位置づけています。
つまり、
戦略だけを描く
プロモーションだけを回す
のではなく、
構想し、実装し、改善するプロセス全体を設計する
ことを重視しています。
マーケティングは「やり方」ではなく、
観光を事業として成立させるための設計思想です。
観光マーケティングは、
施策を増やすためのものではありません。
地域がどの方向を目指し、
どの価値を育てていくのかを明確にするための
共通言語です。
観光デザイン研究所では、
観光マーケティングを起点に、
地域の価値が持続的に循環していく仕組みづくりに取り組んでいます。