REPORT 

〈コラム〉

観光戦略とは何を決めることなのか?

施策づくりの前に整理すべき5つの視点

観光分野では、「観光戦略」という言葉が頻繁に使われます。
一方で現場では、

  • 戦略を作ったはずだが、現場で使われていない

  • 計画書はあるが、施策が場当たり的になっている

  • 毎年同じ議論を繰り返している

といった状況も少なくありません。

それは、観光戦略が「何を決めるものなのか」が、
十分に共有されないまま進められているからかもしれません。

本記事では、観光デザイン研究所の視点から、
観光戦略とは本来何を決めるためのものなのかを整理します。


観光戦略が誤解されやすい理由

観光戦略は、しばしば
「計画書をつくること」と同義で捉えられがちです。

  • 数十ページの報告書

  • 施策一覧の羅列

  • 理念的なビジョン

しかし、こうしたアウトプットがあっても、

  • 日々の意思決定に使われない

  • 現場で参照されない

  • 施策の優先順位が決まらない

という状態では、戦略は機能しているとは言えません。


観光戦略とは「施策を決める前提条件」を決めること

観光戦略の役割は、
「何をやるか」を直接決めることではありません。

それ以前に、

何をやらないのか
どこに集中するのか

を明確にすることにあります。

観光戦略とは、
施策を選び取るための判断軸を定める行為だと言えます。


観光戦略で整理すべき5つの視点

観光戦略を機能させるためには、
最低限、次の5つの視点を整理する必要があります。


1. ターゲット(誰に届けるのか)

  • どの国・地域・層を主な対象とするのか

  • 「すべての人」を対象にしていないか

ターゲットが曖昧な戦略は、
結果的に施策も曖昧になります。


2. 提供価値(何で選ばれるのか)

  • その地域ならではの強みは何か

  • 他地域と比べて、選ばれる理由は何か

「あるもの」ではなく、
「伝えるべき価値」を整理することが重要です。


3. 競合・代替地(何と比較されるのか)

  • 旅行者は、どの地域と比較しているのか

  • 同じ市場で競合する地域はどこか

競合を意識しない戦略は、
自己満足に陥りやすくなります。


4. リソース(何ができて、何ができないのか)

  • 人材、予算、組織体制

  • 地域内で担えること、外部に頼ること

戦略とは、
理想と現実のあいだに線を引く作業でもあります。


5. KPI(何をもって成果とするのか)

  • 短期で見る指標

  • 中長期で見る指標

KPIが定まらなければ、
戦略は評価も改善もできません。


戦略がある地域と、ない地域の違い

観光戦略が機能している地域では、

  • 施策の優先順位が明確

  • 判断が早い

  • 担当者が変わっても方向性がぶれにくい

といった特徴が見られます。

一方、戦略が形骸化している地域では、

  • その場しのぎの施策が増える

  • 成果の評価ができない

  • 「去年と同じこと」を繰り返す

という状況に陥りがちです。


観光戦略は「固定するもの」ではない

重要なのは、
戦略は一度決めたら終わりではないという点です。

  • 市場環境は変わる

  • 社会情勢は変わる

  • 地域の状況も変わる

だからこそ、観光戦略は
定期的に見直され、更新される前提で設計されるべきです。


観光デザイン研究所の戦略設計アプローチ

観光デザイン研究所では、
観光戦略を「考えるフェーズ」と「動かすフェーズ」に分断しません。

  • 現場で使われるか

  • 意思決定に役立つか

  • 実装につながるか

これらを重視しながら、
実装と改善を前提とした戦略設計を行います。

戦略は、
描くためのものではなく、
使われてこそ意味があるからです。


おわりに

観光戦略とは、
施策を増やすためのものではありません。

地域がどこに向かい、
どの価値を育てていくのかを定めるための
羅針盤です。

観光デザイン研究所では、
観光戦略を起点に、
マーケティングやプロモーション、事業づくりが
一貫して機能する状態を目指しています。