

REPORT
〈コラム〉
自治体やDMOにおいて、「観光マーケティング」の重要性は広く認識されるようになりました。
データを取り、戦略を描き、プロモーションを実施する。
一見すると、やるべきことは一通り揃っているように見えます。
しかし現場では、
マーケティングをやっているはずなのに、手応えがない
施策は増えているが、成果につながっている実感がない
組織として何が課題なのか分からない
といった状況に陥ることも少なくありません。
実は、これらの多くは
能力や努力の問題ではなく、構造的な失敗によって起きています。
そしてそれは、私自身がDMOに在籍していた頃にも、実際に経験したことでした。
かつてDMOは、
観光事業者の調整役
補助金事業の受け皿
プロモーション実施主体
といった役割が中心でした。
しかし近年、DMOにはそれに加えて、
データに基づく意思決定
中長期視点での観光戦略
事業としての自走力
が求められるようになっています。
その中で、「観光マーケティング」という言葉が
DMOの中核機能として位置づけられるようになりました。
私自身がDMOにいた当時、
観光マーケティングの第一歩として取り組んだのが「データ活用」でした。
来訪者数
属性データ
アンケート結果
今振り返れば、データを集めること自体がゴールになっていたように思います。
データは蓄積されていくものの、
そのデータで何を判断するのか
どの意思決定に使うのか
が明確ではありませんでした。
結果として、
「データはあるが、意思決定は変わらない」
という状態に陥っていました。
もう一つの大きな失敗は、
マーケティングが組織ではなく、個人の仕事になっていたことです。
マーケティング担当が一人で抱える
他部署は「よく分からないから任せる」
意思決定の場にマーケティングの視点が持ち込まれない
この状態では、どれだけ担当者が頑張っても、
組織全体の動きは変わりません。
当時の私は、
「どうすればマーケティングが機能するか」ではなく、
「どうすれば自分が回せるか」を考えてしまっていました。
観光戦略やマーケティング方針は存在していました。
しかし、それが現場の事業やプロモーションと
十分につながっていなかったのも事実です。
戦略はあるが、現場は別の判断で動く
現場の事情が戦略に反映されない
結果として、どちらも中途半端になる
戦略と実装を分けて考えてしまったことが、
マーケティングを形骸化させていました。
これらの失敗に共通しているのは、
マーケティングを「専門業務」として切り出してしまったことです。
マーケティング=分析
マーケティング=プロモーション
マーケティング=担当部署の仕事
こうした捉え方では、
マーケティングは組織の意思決定に組み込まれません。
結果として、
施策が場当たり的になる
成果が検証されない
改善が起きない
という悪循環が生まれます。
これらの経験から、今は次のように考えています。
データは集めるためではなく、判断を変えるために使う
数値は説明資料ではなく、意思決定の材料
特定の担当者に閉じない
意思決定の場に必ず持ち込まれる
戦略は現場で使われる前提で描く
現場の声を戦略に戻す
観光デザイン研究所では、
DMOマーケティングを
施策を増やすための機能
ではなく、
意思決定の質を高めるための仕組み
として位置づけています。
組織の中でどう使われるか
誰の判断がどう変わるか
現場で回り続けるか
これらを重視しながら、
構想から実装、改善までを一体で支援しています。
DMOの観光マーケティングがうまくいかない理由は、
担当者の能力不足でも、意欲の欠如でもありません。
多くの場合、
組織と仕組みの設計が追いついていないだけです。
私自身がDMOの現場で失敗を重ねたからこそ、
今は「どうすれば機能するか」を、現場目線で語れると考えています。
観光デザイン研究所では、
そうした経験を踏まえながら、
自治体・DMOとともに考え、動かす支援を行っています。