REPORT 

〈コラム〉

自治体・DMOの観光マーケティングのよくある失敗例

DMOにいた当事者として、うまくいかなかった理由を振り返る

自治体やDMOにおいて、「観光マーケティング」の重要性は広く認識されるようになりました。
データを取り、戦略を描き、プロモーションを実施する。
一見すると、やるべきことは一通り揃っているように見えます。

しかし現場では、

  • マーケティングをやっているはずなのに、手応えがない

  • 施策は増えているが、成果につながっている実感がない

  • 組織として何が課題なのか分からない

といった状況に陥ることも少なくありません。

実は、これらの多くは
能力や努力の問題ではなく、構造的な失敗によって起きています。
そしてそれは、私自身がDMOに在籍していた頃にも、実際に経験したことでした。


DMOにマーケティングが求められるようになった背景

かつてDMOは、

  • 観光事業者の調整役

  • 補助金事業の受け皿

  • プロモーション実施主体

といった役割が中心でした。

しかし近年、DMOにはそれに加えて、

  • データに基づく意思決定

  • 中長期視点での観光戦略

  • 事業としての自走力

が求められるようになっています。

その中で、「観光マーケティング」という言葉が
DMOの中核機能として位置づけられるようになりました。


失敗例①|「データを集めること」が目的になっていた

私自身がDMOにいた当時、
観光マーケティングの第一歩として取り組んだのが「データ活用」でした。

  • 来訪者数

  • 属性データ

  • アンケート結果

今振り返れば、データを集めること自体がゴールになっていたように思います。

データは蓄積されていくものの、

  • そのデータで何を判断するのか

  • どの意思決定に使うのか

が明確ではありませんでした。

結果として、
「データはあるが、意思決定は変わらない」
という状態に陥っていました。


失敗例②|マーケティングが「担当者任せ」になっていた

もう一つの大きな失敗は、
マーケティングが組織ではなく、個人の仕事になっていたことです。

  • マーケティング担当が一人で抱える

  • 他部署は「よく分からないから任せる」

  • 意思決定の場にマーケティングの視点が持ち込まれない

この状態では、どれだけ担当者が頑張っても、
組織全体の動きは変わりません。

当時の私は、
「どうすればマーケティングが機能するか」ではなく、
「どうすれば自分が回せるか」を考えてしまっていました。


失敗例③|戦略と現場が分断されていた

観光戦略やマーケティング方針は存在していました。
しかし、それが現場の事業やプロモーションと
十分につながっていなかったのも事実です。

  • 戦略はあるが、現場は別の判断で動く

  • 現場の事情が戦略に反映されない

  • 結果として、どちらも中途半端になる

戦略と実装を分けて考えてしまったことが、
マーケティングを形骸化させていました。


なぜこれらの失敗が起きてしまうのか

これらの失敗に共通しているのは、
マーケティングを「専門業務」として切り出してしまったことです。

  • マーケティング=分析

  • マーケティング=プロモーション

  • マーケティング=担当部署の仕事

こうした捉え方では、
マーケティングは組織の意思決定に組み込まれません。

結果として、

  • 施策が場当たり的になる

  • 成果が検証されない

  • 改善が起きない

という悪循環が生まれます。


機能するDMOマーケティングに必要な視点

これらの経験から、今は次のように考えています。

マーケティングは「判断のための仕組み」である

  • データは集めるためではなく、判断を変えるために使う

  • 数値は説明資料ではなく、意思決定の材料


マーケティングは「組織の共通言語」である

  • 特定の担当者に閉じない

  • 意思決定の場に必ず持ち込まれる


戦略・実装・改善を切り離さない

  • 戦略は現場で使われる前提で描く

  • 現場の声を戦略に戻す


観光デザイン研究所がDMO支援で重視していること

観光デザイン研究所では、
DMOマーケティングを

施策を増やすための機能
ではなく、
意思決定の質を高めるための仕組み

として位置づけています。

  • 組織の中でどう使われるか

  • 誰の判断がどう変わるか

  • 現場で回り続けるか

これらを重視しながら、
構想から実装、改善までを一体で支援しています。


おわりに

DMOの観光マーケティングがうまくいかない理由は、
担当者の能力不足でも、意欲の欠如でもありません。

多くの場合、
組織と仕組みの設計が追いついていないだけです。

私自身がDMOの現場で失敗を重ねたからこそ、
今は「どうすれば機能するか」を、現場目線で語れると考えています。

観光デザイン研究所では、
そうした経験を踏まえながら、
自治体・DMOとともに考え、動かす支援を行っています。