REPORT 

〈コラム〉

観光地域づくりはなぜ形骸化しやすいのか

計画倒れを防ぐために必要な「実装」の視点

「観光地域づくり」という言葉は、いまや多くの自治体やDMOで使われています。
計画策定、協議会設置、ワークショップ開催など、取り組みの数も増えてきました。

一方で現場では、

  • 立派な計画はできたが、実行されていない

  • 会議は続いているが、現実はあまり変わらない

  • 何のための地域づくりなのか分からなくなっている

といった声も少なくありません。

なぜ観光地域づくりは、志は高いのに、形骸化しやすいのでしょうか。


観光地域づくりが「進んでいるように見える」理由

観光地域づくりは、外から見ると進んでいるように見えます。

  • 計画書がある

  • 組織体がある

  • 定期的な会議や検討の場がある

しかし、これらはあくまで「形式」です。
形式が整っていることと、実際に地域が変わっていることは、必ずしも一致しません。

観光地域づくりが形骸化する多くのケースでは、
「やっている感」と「実態」のあいだに大きなギャップがあります。


形骸化の要因①|合意形成そのものが目的化している

観光地域づくりでは、
多様な関係者の合意形成が不可欠です。

しかし、合意形成が重視されるあまり、

  • 反対が出ないことが最優先になる

  • 方向性が曖昧なまま進む

  • 誰も責任を持たない結論になる

という状況に陥ることがあります。

結果として、

「みんなが賛成するが、誰も本気で動かない」

という計画が生まれてしまいます。


形骸化の要因②|目的と手段が入れ替わっている

観光地域づくりの現場では、

  • ワークショップを開くこと

  • 計画を作ること

  • 会議を継続すること

が目的化してしまうケースが少なくありません。

本来の目的は、

  • 観光を通じて地域がどう変わるのか

  • どんな価値を育てたいのか

であるはずです。

手段が目的にすり替わると、
地域づくりは「作業」になり、次第に熱量を失っていきます。


形骸化の要因③|「実装主体」が曖昧なまま進んでいる

計画書の中には、

  • 「推進する」

  • 「検討する」

  • 「連携を図る」

といった言葉が並びがちです。

しかし、

  • 誰が

  • いつ

  • どこまで責任を持つのか

が明確でない計画は、実行されません。

観光地域づくりが形骸化する最大の要因の一つは、
実装主体が曖昧なまま計画が進んでしまうことにあります。


観光地域づくりを機能させるための視点

では、観光地域づくりを
「形骸化」ではなく「変化」につなげるためには、
何が必要なのでしょうか。


小さく試し、動かしながら考える

最初から完璧な計画を目指す必要はありません。

  • 小さな実証

  • 限定的なエリア

  • 特定のターゲット

から始め、
実際に動かしながら検証することが重要です。

動かない計画より、
動きながら修正できる取り組みの方が、
結果的に地域を変えていきます。


観光を「事業」として捉える

観光地域づくりが続かない理由の一つは、
事業としての視点が弱いことです。

  • 誰の収益になるのか

  • 人材はどう育つのか

  • 継続するための仕組みはあるのか

これらを考えないままでは、
補助金や制度が終わった瞬間に取り組みも終わってしまいます。


意思決定の軸を共有する

関係者が多いからこそ、

  • 何を優先するのか

  • 何をやらないのか

という判断軸を共有する必要があります。

その役割を果たすのが、
観光戦略と観光マーケティングです。


観光デザイン研究所の考える観光地域づくり

観光デザイン研究所では、
観光地域づくりを

計画をつくるプロセス
ではなく、
価値が循環し続ける仕組みを育てるプロセス

として捉えています。

そのために、

  • 構想

  • 実装

  • 改善

を切り離さず、
現場で回り続ける形を重視しています。


おわりに

観光地域づくりが形骸化するのは、
地域に熱意がないからではありません。

多くの場合、
「動かす設計」まで落とし込めていないだけです。

観光デザイン研究所では、
観光地域づくりを理念で終わらせず、
現場で変化が生まれるところまで、
地域とともに取り組んでいきます。